空燃費 DRS-DrifterRoadster-
Last Modified: 04/06/2003 01:41:40
空燃比とは
空燃比とは混合気中のガソリンと空気の質量の比のことです。A/F(Air By Fuel)と表現したりもします。英語表記だと非常に分かり易く表現されてまして、混合気中に含まれる空気の質量を燃料の質量で割った値になります。
では、空気とガソリンについてです。
(フリーダムネタでほぼ同様のネタを書いています。用いている数値が若干異なるので、計算結果に少しずれがあります。)
空気
空気の質量ってどの位なのでしょうか?
こんな教育に悪そうなページをよい子は読んでないでしょうから、悪い大人の皆さん、はるか昔の理科の授業を思い出してください。
1molは6×1023個の分子の集まりを指す単位だと習いましたよね。標準状態の気体(0℃,1atm)では22.4リットルになります。ちなみに空気の分子量は28.967なので、22.4リットルの空気の質量は28.967gです。
燃焼は光と熱を伴って物質が酸素と結合することです。では、空気中にはどのぐらい酸素があるのでしょうか。空気中に一番多く含まれているのが窒素で8割弱。酸素O2が21%です。
次に、酸素の重さについてです。酸素の分子量は31.998です。つまり、22.4リットルの標準状態の酸素は31.998gということです。
重量比で空気中の酸素の占める割合を考えると、0.21×31.998/28.967=0.23197362515966444574861048779646≒0.23となります。
酸素の原子量は15.9994です。
ガソリン
ガソリンの重さは・・・JIS規格などにも幅が有ってパチッと出ないんです。
レギュラーとハイオクでも異なります。たぶん産油地によっても異なるんでしょう。最近よく見る"76"のロゴで有名なユノカルは最初に作ったガソリンのオクタン価が76だったことに由来するらしいというのは、どうでもいい余談。
ガソリンは石油から精製して作った炭化水素です。つまり炭素と水素がくっついたもの。くっつき方によって性質が変わります。
C7H16をノルマルヘプタン・C8H18をイソオクタンと呼びます。
オクタン価=(イソオクタン/(イソオクタン+ノルマルヘプタン))×100 (重量比)
JIS規格ではオクタン価95以上でハイオクだったような気がします・・・ちょっといい加減・・・
イソオクタンの燃焼式は・・・
2C8H18+25O2→16CO2+18H2O+熱(46,000kJ/kg)
水素と炭素の原子量はH=1.00794,C=12.011です。
理論空燃比
では、いよいよ空燃比の計算をしてみましょう。
2C8H18+25O2でしたから、これを元にガソリン(イソオクタン)が全て酸素と結びつくのに必要な酸素の量を求めます。
2(12.011×8+1.00794×18):25×15.9994×2=228.46184:799.97=1:3.5015475669809890351929232470508≒1:3.502
つまり、重量比でガソリンの約3.5倍の酸素が必要になります。
では、1gのガソリンを燃やすのに必要な空気の重さは・・・空気中の酸素の重量による含有率は0.23でしたから
1g×3.502/0.23=15.226086956521739130434782608696≒15.226g
つまり、理論空燃比は15.2となります。
けど、一般的には理論空燃比は14.7と言われています。はてはて??
ノルマルヘプタンも考えてみます。
C7H16+11O2→7CO2+16H2O
12.011×7+1.00794×16:11×15.9994×2=100.20404:351.9868=1:3.5127006855212624161660547818232≒3.513
1g×3.513/0.23=15.273913043478260869565217391304≒15.274g
う〜〜ん、ハイオクでもレギュラーでも理論空燃比に殆んど差はないようですね。
ほななんで理論空燃比は14.7やねん。おかしいやんけぇ!!
添加剤のせいかなぁ??
けど、少々混ぜたぐらいで約0.6もずれるか?
謎や・・・全ての水素・炭素が完全に燃焼するのもムヅカシイし、色んな不純物も混ざってるだろうから、その辺を加味して14.7なんでしょうか??
と考えてみてたのですが、触媒が一番効率よく仕事するのが多分ここなんでしょう。理論的考察は後ほど・・・
出力空燃比
理論空燃比に続いて、出力空燃比です。
12台半ばらしいです。だから、12.5〜12.6という辺り。理論空燃比と違って単純な計算で出てきません。実験から出てきた数値なんでしょう。
どうやって調べるのか・・・知りません。だから、ここから先は想像です。
燃焼の速さを表すのに、燃焼速度があります。単位はm/s、単位時間当たりの長さで表します。式は、
SL=V/A
- SL:層流燃焼速度(m/s)
- 混合気が層流(流れの乱れていない状態)時の燃焼速度
- V:混合気の体積流量(m3/s)
- 時間当たりに燃焼した混合気の体積
- A:火炎の表面積(m2)
- 火炎の表面積(そのままですね)
で表します。層流燃焼速度は、燃焼に使われる混合気が層流・・・つまり乱れずに流れている状態での燃焼速度です。これに対して乱流燃焼速度というのがあり、これは混合気が乱れた状態での燃焼速度です。層流燃焼速度より大きな値になります。
燃焼速度は、空気比(空燃比)・酸素濃度・温度・圧力によって、乱流燃焼速度の場合であれば更に混合気の乱れ方によって燃焼速度は変化します。
- 空気比(空燃比)
- 理論空燃比よりリッチ側で最大燃焼速度となる
- 酸素濃度
- 酸素濃度の上昇と共に燃焼速度も上がる
- 温度
- 混合気の温度の上昇と共に燃焼速度も上がる
- 乱流
- レイノルズ数で表し、乱流が強いほど燃焼速度が速くなる
出力空燃比が一番出力が高くなるという根拠は何でしょう?
出力はつまり熱量に依存しますから、完全に燃焼させるほうが発生熱量が多くなるため高出力になるはずです。理由はおそらく燃焼速度にあると考えます。限りある燃焼室で、少しでも出力を上げるためには平均有効圧・燃焼ガスの増加を図る意外にありません。言い換えますと圧縮比を上げる・吸入効率を上げる・回転数を上げるということになります。圧縮比はストロークと燃焼室容積で決まりますし、実圧縮は更にバルタイ・カムプロフィールにより変化します。吸入効率はバルタイ・カムプロフィール・ポート形状・吸気圧などにより変化します。
馬力はトルクと回転数の積です。シャシダイの結果を見たりしますと、最大トルク発生回転数よりも上側に最大出力発生回転数があります。最大トルク発生回転数を超えると発生トルクは低下しますが、回転数が上昇しますので出力は増えます。トルクの低下による出力低下分が回転数の増加による出力増加分超えようとする回転数が最大出力発生回転数です。ちょっと話がそれましたが、回転数を上げればトルクが低下しない限り、出力は上がります。
回転数を上げていけば、一定時間に燃焼させる混合気の量が比例して増えます。燃焼速度が一定だとすると、回転の上昇に燃焼が追いつかなくなります。また、点火時期のところでも書くと思いますが、4ストの場合720°CAで一回の燃焼ですが、燃焼に費やせる角度は60°CA。ノッキングなどを考えると高回転時にはこの半分ぐらいになります。
ということで、出力空燃比は最も出力が高くなる空燃比ではなく、混合気を最も多く燃焼させられる空燃比のことだと思います。
経済空燃比
経済空燃比とは、燃料を減らすことで経済性を向上させるための空燃比です。
理論空燃比のように計算で単純に求めることはできません。
最近の自動車メーカーの技術動向を見ていると、出力の向上よりも環境負荷の小さいエンジンに主眼が置かれているようです。炭化水素燃料を燃焼させると、二酸化炭素と水が発生します。また、燃焼温度が高くなると窒素酸化物(NOx)も発生します。二酸化炭素は地球温暖化・窒素酸化物は光化学スモッグの原因物質といった具合に人間の生活環境に悪影響を及ぼします。
地球にやさしいという言葉は、私は大嫌いです。他人事じゃないんです。
・・・はともかく、少ない燃料で回そうというのが経済空燃比です。一般的に17台半ばといわれてます。あまり薄くすると燃えきらなかったり、失火したりするんですね。燃焼室内に濃淡をつける、つまりプラグ周辺だけ濃くして他は薄くして実質の空燃比を下げるリーンバーンエンジンだと20台で燃やしたりします。燃焼室の話になるので簡単に留めますが、スワールやタンブルによる均一な燃焼状態での経済空燃比は17台半ばになります。出力空燃比と同様に色んな条件で変化します。